J-POPのコード進行パターン 1《AKB48編》

恋するフォーチュンクッキー

恋するフォーチュンクッキー [不明]

クリエーターAKB48

出版社KingRecords

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AKB48「恋するフォーチュンクッキー」(題材コード進行)

売れたのには訳が有る!ポップスの教科書曲

※このページはJ-POPの楽曲を題材にコード進行のパターンをアナライズ(解析)をしています。
ダイアトニックコードを基本とした考察になりますので、
なんだそれ?という方は当サイト内”作曲の基本”のページを先にご覧下さい。
本文中、ダイアトニックコードはD.T.C.と略しています。

筆者は日頃、音楽理論の講義やセミナー活動をしていますが、
アナライズする際の最初の一曲、または時間的に一曲しか扱えない時は
数年前からこの曲を第一候補にしています。
何故かと言うと、5分足らずの間にポップスの技法を大量に網羅しながら、
全体のサウンドは全く押し付けがましくないという正に職人技だからです。
筆者と、知人の同業者の初聴の感想は”ズルい!売れない訳が無い!”でした。

このページではAメロ~Bメロ~サビ~ブリッジの4つに分けて説明します。
キーはkey=Dなので、D.T.C.は以下の様になります。

3声 D G A Bm
4声 Dmaj7 Em7 F#m7 Gmaj7 A7 Bm7 C#m7(b5)

それでは「恋するフォーチュンクッキー」
略して恋チュンのコード進行パターンを解析していきましょう!

Aメロ -ちょっと古めの穏やか進行-

まずはAメロ。
イントロ後半と同一で、コード進行はこんな感じです。

D |Bm7 |D |Bm7 |G |A |D |Bm7
Ⅰ|Ⅵm7|Ⅰ|Ⅵm7 |Ⅳ|Ⅴ|Ⅰ|Ⅵm7

この8小節が2回繰り返されるのですが、
注目部分はⅠ-Ⅵm7-Ⅳ-Ⅴと繋がる部分。
これはアメリカのミュージカルや古めのジャズで多用された
”循環コード”という進行です。
誰もが知る代表曲は「Stand by Me」かなと。

循環という言葉通り、最後にⅣ-Ⅴが置かれることで
何回でも繰り返せるようになっています。
ⅠとⅥm7はそれぞれキーのドミソ、ラドミソなので
サウンドの変化は大きくなく、同様にⅣとⅤが3声のため、
複雑さや押し付けのない柔らかなサウンドを産みます。

歌詞にも少し注目してみましょう。
ⅠとⅥm7のサウンド変化は少ないと書きましたが、
それでもⅥm7は暗さを持ったコードです。

あなたのことが(D)好きなのに(Bm7)
わたしにまるで(D)興味ない(Bm7)

見事に寄り添っているのが分かるかと思います。

Bメロ -強い進行感、動き出す予感-

Bメロに入ります、コード進行はこんな感じ。

Gmaj7 |A |F#m7|Bm7
Ⅳmaj7|Ⅴ|Ⅲm7|Ⅵm7 ×2(8小節)

E7 |E7 |Asus4 |A
Ⅱ7|Ⅱ7|Ⅴsus4|Ⅴ

ここでのコード進行は”王道進行”というものが使われています。
本来は逆循環の意で”逆循コード”という進行という名前ですが、
余りにJ-POPのサビで使われた結果、この名前が一般的に。
循環コードのⅠを同じトニック系の(と言うよりⅥmに向かう意味で)
Ⅲm7に置き換えて、更に順番をひっくり返したもの。
Ⅳ-Ⅴの進行感を手前側に持ってきて曲をドライブさせている訳です。

歌詞の方も引っ込み思案な女の子がカフェの音楽を聞いて
徐々に高揚している姿を描いています。

そしてここで、初のノンダイアトニックコード、Ⅱ7が登場。
曲のキーの中で一番不安定なⅤ7、それに対してのⅤ7です。
(key=DのⅤ7はA7、key=AのⅤ7はE7)
こういった進み方を5度進行と呼び、
次のコードにグイグイ進んでいくために強進行とも呼ばれています。

続いてⅤsus4。このsus4はノンダイアトニック中、
もっとも使いやすい物の一つです。
大抵の場合はⅠsus4かⅤsus4として登場しますが、
このsusはサスペンデッド(保留、浮遊)の略で、
コードの一つ飛ばし構成を止めて、明るい暗いを一時停止させます。
曲の終わり(Ⅰ)や盛り上がり(Ⅴ)の直前に置いて、
少しだけ結論を遅くしている訳です。
構成音はコードの一番下の音から1、4、5。
今回出てきたⅤ7の場合はキーのソドレになります。
(今回はkey=DのAsus4なので実音はADE)

歌詞との相対もチェックしましょう。
不安定かつ別のキーの音まで入ったⅡ7の位置で
見事に”止められない今の気持ち”と歌っています。
そして、Ⅴsus4でキメが置かれ、Ⅴを一瞬鳴らして止まり
”占ってよ”。寄り添い方が完璧です。

サビ -穏やかでも、そんな悪くない-

いよいよサビです、普通なら盛り上がる筈ですが…。
コード進行はこんな感じです。

D |A/C#|Bm|A |G |F#m7|Em7 |A
Ⅰ|Ⅴ |Ⅵ|Ⅴ |Ⅳ|Ⅲm7|Ⅱm7|Ⅴ

D |A/C#|Bm|A |G |F#m7|Em7 |
Ⅰ|Ⅴ |Ⅵ|Ⅴ |Ⅳ|Ⅲm7|Ⅱm7|

※厳密には二番目と四番目のコードは
F#m7/C#とF#m7ですが簡易化しています。

ここで使われている進行は”カノン進行”です。
クラシック曲、パッヘルベルのカノンから来ている名前ですが
ポップスでは井上陽水「少年時代」で有名です。
循環コードに似ているため、「主にAメロで使われる」穏やかな進行。
(サビに使われてる楽曲も多数有りますが)

ポップスにおけるカノン進行で大事なのは、
ベース・クリシェ(順次進行)という技法を含んでいる部分。
これは、一番低い音が隣の音に進むというもの。
2つめのコード、A/C#に注目して下さい。
Ⅴのコードの構成音、ソシレ(A7の場合はA-C#-E)
この音の中のシ=3度の音を一番下にしています。
これにより、キーの主音からドシラソファミレと穏やかに繋がる訳です。
最後はレ→ソの動き、コードで言うとⅡm7-Ⅴ(ツーファイブ)を入れ、
2周目や次のセクションに進んでいきます。

ちなみに簡易化したという注意書きを入れましたが、
これはメロディとの兼ね合いです。
カノン進行では特に4つ目のコードは色々と変化します。
クラシカルなⅢm7/3rd、穏やかなⅠ/5th、勢いの有るⅤが代表格。
(key=Dの場合だとF#m7/A、D/A、A)
この曲の場合はメロディにC#の音が有るため、
F#m7/A、Aが候補にあがり、より簡易なAで表記しました。

歌詞の方、見事に寄り添ってます。
”未来はそんな悪くない”この軽い調子が
穏やかな進行に見事にリンクしています。
もし進行感が強ければ”私の願いを叶えて!”とか
”あの人に会わせて!”といった様な強い感情が合っていた筈。

ブリッジ -神輿には、担ぎ手がいるもの-

サビの後半部分からをブリッジとしました。
人生捨てた~の部分からですね。

ここのコードはAsus(Ⅴsus)一つです。
人によって解釈は様々ですが、
メロディのハモがキーのドシドシドシドシ~なので
ⅤともⅤsusとも取れます。

ですが、もちろん理論的な解釈は出来ます。
この技法はドミナント・ペダルと呼ばれているもの。
ペダルというのは同じ最低音を連打する技法で、
全体を落ち着かせるトニック・ペダル(ドの連打)と、
全体を煽っていくドミナント・ペダル(ソの連打)が有ります。

この曲ではストリングス、ベースライン、歌のハモりなどが
様々なフレーズを入れて賑やかなパーティー感を出しています。
そのサウンドをドミナント・ペダルする事で
支えつつも煽っている訳です。

最後に

恋チュンの解説、いかがだったでしょうか。
使われている技法が多かったため長文になってしまいました。
実はメロディ、テンポ、間奏やエンディングにも仕掛けが有るので、
理論への理解が深まると更に楽しめるかと思います。

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