洋楽のコード進行パターン 2|Taylor Swift「We Are Never Ever Getting Back Together」

※このページは著名な洋楽の楽曲解析をしています。
ダイアトニックコードを基本とした考察になりますので、
なんだそれ?という方は当サイト内”作曲の基本”のページを先にご覧下さい。
本文中、ダイアトニックコードはD.T.C.と略しています。

テイラースイフト「We Are Never Ever Getting Back Together」(コード進行解説題材)

いきなりの…「ミュージシャンの為の地政学」

洋楽解析の第二弾ですが、今回は読み物的な内容が多くなります。
楽器はしばらく置いて、気軽に読み進めていって下さい。

今回の楽曲ですが、テイラー・スイフト(Taylor Swift)の大ヒット曲で
某バラエティ番組での使用を筆頭に、
一度は耳にしたことがある人が多い曲でしょう。

この曲の作詞作曲およびプロデュースに、
現代ポップスの最重要人物の一人が携わっています。
その名も、マックス・マーティン(Max Martin)。

Wikipediaなどを見ていただければ判りますが、
とにかく全米を代表するヒット曲を連発しています。
そして大抵の場合でプロデュースだけじゃなく
作詞、作編曲も兼ねている事が多い人物。

こういった、楽曲に積極的に関わり
トータルでサウンドを統括するタイプのプロデューサ、
デヴィッド・フォスターやベイビーフェイス、
ロック畑だとボブ・ロックやデズモンド・チャイルドなど
アメリカでは数多く見られる傾向です。

そもそも多民族国家のアメリカの音楽は
土地柄での趣向の差が非常に大きく、
その為ローカル色の強いラジオが大事なメディアになっています。
土地が広いため車での移動中に聞く事も多く、
ラジオは非常に重要視されているのです。

趣向の差の掴んでおくべき点としては
NYを代表する東北側はジャズやヒップホップが強く、
テネシーを代表する東南側はカントリーが強く、
ロスを代表する西側はポップやロックが強いという風潮。
大雑把でも覚えておくと良いかと思います。

統括すると、アメリカのヒット曲とは
好みの振り幅が大きい全米中でも大多数の人が好んだ楽曲、
つまりは多種多様な人がいる世界中でもヒットする可能性の有る
グローバル寄りな楽曲と言えます。
その為、プロデューサも多角的な視線、手腕を持つ人が多いのです。

翻って我が日本。
ここで、今回表題した地政学的な部分が出てきます。
90年代まで、と言うよりインターネットが盛んになるまでは
日本の音楽は完全にロスの音楽の影響を受けていました。

理由はシンプルで、”距離が近いから”です。
世界地図を見てみましょう。
アメリカの西側と日本、近いですよね。
情報の伝達やミュージシャンの来日および移住、布教など
インターネットが盛んになるまでは完全に、
実際的な距離が音楽の伝達に関わっていました。

日本とは逆に、アメリカ東側に近いヨーロッパでは
NYのジャズミュージシャンが移住し高度な演奏を披露した結果、
ヨーロッパジャズとして今や一ジャンルとして成立しています。

昔の日本ではポップスは完全にLAサウンドの模倣でしたし、
今でも演歌にはロックのニュアンスが非常に強い。
現在でも日本のヒット曲はポップス、
更に言えばロック寄りなポップスが多く、
ダンス系の曲でも非常に歌謡曲的なコード進行を持っています。

日本のロスからの影響は今後扱う予定の
デヴィッド・フォスターの解析の際にも書きますが、
音楽の傾向には地理や歴史、つまりは地政学が影響する。
そんな考え方を意識して貰えればと思います。

では、いよいよマックス・マーティン、
そして今回の楽曲の解説に移りましょう。

このページではAメロ~Bメロ~サビ~ブリッジの4つに分けて説明します。
キーはkey=Dなので、D.T.C.は以下の様になります。

3声 G A Bm
4声 Dmaj7 Em7 F#m7 Gmaj7 A7 Bm7 C#m7(b5)

それでは「We Are Never Ever Getting Back Together」、
解析していきましょう!

:Aメロ
:Bメロ
:サビ
:ブリッジ

C G |D Em
Ⅳ Ⅰ|Ⅴ Ⅵm

…以上です(笑)
一応、厳密に言えばサビ終わりは変わります。

C G |D
Ⅳ Ⅰ|Ⅴ

…減っとるやないかい!(笑)
という、まあ何とも潔いコード進行。

ですが、改めて楽曲を聞くと非常に展開を感じさせています。
ループ状のコード進行自体はファンクやヒップホップでは普通ですし、
以前にラルクの解析で紹介したⅠ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅳの
U2進行も原曲のコードは一切展開しません。

そして今回の楽曲でのコード進行は
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅳの順番を入れ替えた
Ⅳ→Ⅰ→Ⅴ→Ⅵmとなっています。
元々が進行感が薄い進行としてU2進行を紹介していますが、
Ⅳが先頭になった結果その傾向は更に強まります。

強進行と言われる5度進行で使われるコードを並べると
Ⅴ→Ⅰ→Ⅳとなりますが、今回は真逆。
進行感の薄さに加え連続のメジャーコードが
明るいのに虚しい非常に空虚なサウンドを作っています。

ただし、この空虚感は行き先の無い広がり感も持っています。
洋楽ロックの大陸間的な広がりに使われることもありますし、
J-POPでも大人な雰囲気を出したり場面の展開に使われています。
進行感が薄いため推進力は有りませんが、
茫洋としたAメロやサビ後のCメロで展開を付けたい時など
ストックとして覚えておくと良いかなと。

さて、再び地政学的な話に戻りましょう。
件のマックス氏、アメリカのポップスに広く携わりますが
実は出身はスウェーデンの方です。(恐らくは現在も在住)

スウェーデンの音楽シーンを見ると、
NYの影響を受けた北欧ジャズ(E.S.T.など)
古都ならではの中世的な北欧HR/HM(イングヴェイを筆頭に)
…などが代表的なものとして挙げられますが、
世界的ヒットでいうと、ケルト風なフォークを元にした
スウェディッシュ・ポップが真っ先に挙がると思います。

近年ではカーディガンズがヒットしましたが、
古くはABBA(アバ)というユニットも居ました。
彼らに共通するサウンドはアイロニカル(皮肉)さ、
そしてメジャー曲での底抜けの明るさ。
そう、まるで空虚なほどに。

今回の曲のサビにも共通した点が有ると思います。
コード進行は空虚ながらメジャーコードの連発、
そして裏声での”we!”の大合唱。
もはや明る過ぎて狂気すら個人的には感じます。

ここで話が飛躍しますが、
スウェーデンや北欧の地理的な特徴として何が浮かびますか?
まずはサンタクロースを代表した雪国=寒さのイメージや、
夜空に浮かぶ満天の星とオーロラが思い付くのではないでしょうか。
これらの現象は緯度が高いため、北極に近い為に起きています。

そして高緯度の土地ではもう一つ或る現象が起きます。
それは、太陽が一日中沈むことの無い”白夜”。
北欧のとある国では自殺率が世界一、
そしてその80%が白夜に起きたという統計が有るそう。
医学的にも明るい環境に長時間居つづけるのは
精神衛生的に非常に良くないとされています。

スウェーデンの音楽の底抜けの明るさ、
idiot的な空虚さ、そこはかとない狂気を
白夜に求めてしまうのは牽強付会でしょうか。

決して誹謗している訳ではなく、
日本に四季折々の曲が有る様に、
アメリカに広い大陸的な曲が有る様に、
筆者は北欧の突き抜けた明るいサウンドに触れた時
生まれ育った土地の影響を感じてしまうのです。
そして、こういった人間の根本に有る情感こそが
音楽にとって大事なものなのではないでしょうか。

今回はロスと日本の関係、気候と音楽の関係など
一理有る様な無い様な、帰納法的な話を中心にしました。
洋楽風サウンドを追求する時に、
携わる人々の出身地や出身ジャンルなどを調べてみると
有用なヒントが見つかる事も多いのではと思います。
是非、参考にしてみて下さい。

…最後まで長文を読んでいただいた方に
楽曲の技法的に非常に有用な話も。
今回の曲の様に同じコード進行内で違うメロを展開させた時には
必殺の技法が有ります。

それは”同時にメロを展開させる”という技法。
この曲では最後のサビにBメロが重ねて多層構造を演出していますが
当然ながら場合によってはAメロを重ねる事も問題なく可能。
また、この曲では同一コードのループ感が重視されていますが、
ⅠとⅥmの置き換えなどで多重メロの基本構造を壊さないまま
コードを発展させていくと更にサウンドは盛り上がりを見せます。

以前の解説で無理にコードを複雑化させる必要は無いと書きましたが
こういった多重構造はシンプルな進行だからこそ出来ること。
コードの字面にこだわり過ぎず、耳で受け取る情感や
響きを大事に作編曲していってもらえればと思います。

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コード理論から解析したページを多数掲載しています。
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