J-POPのコード進行パターン 3「桜のあと(all quartets lead to the?)」

桜のあと(all quartets lead to the?)

桜のあと(all quartets lead to the?) [不明]

クリエーターUNISON SQUARE GARDEN

出版社TOY'S FACTORY

商品カテゴリーMP3 ダウンロード

Supported by amazon Product Advertising API

「桜のあと(all quartets lead to the?)」(題材曲)

※このページはJ-POPの楽曲解析をしています。
ダイアトニックコードを基本とした考察になりますので、
なんだそれ?という方は当サイト内”作曲の基本”のページを先にご覧下さい。
本文中、ダイアトニックコードはD.T.C.と略しています。

ベーシストは多作家の夢を見るか?

近年のロックバンドの傾向として、
4つ打ちのバスドラ中心のサウンドで
割とシンプルなコード進行が多い様に思えます。

そんな中で正調な歌モノ進行をロックに持ち込みつつ、
ポップなメロを前面に押し出しているUNISON SQUARE GARDEN
数年前にレッスンで生徒から教わって以来、
曲を聞くたび感心させられ続けています。

全ての作詞作曲はベースの田淵智也氏が担当。
田淵氏はユニゾンだけではなく
他アーティストへの楽曲提供もしている、
J-POPシーンの中では特筆すべき多作家です。
彼の技法を解析する事で曲を量産する為の
ヒントが何か見つかるのではと思い取り上げました。

このページではブリッジ~Aメロ~Bメロ~サビの4つに分けて説明します。
キーはkey=Eなので、D.T.C.は以下の様になります。

3声 E A B C#m
4声 Emaj7 F#m7 G#m7 Amaj7 B7 C#m7 D#m7(b5)

それでは「桜のあと(all quartets lead to the?)」
略して桜のあと、解析していきましょう!

ブリッジ -王道的、王道進行-

まずはイントロ代わりに合唱パート。

A B |G#m7 C#m |A B |G#m7 C#m |
Ⅳ Ⅴ|Ⅲm7 Ⅵm7|Ⅳ Ⅴ|Ⅲm7 Ⅵm7|

A B |G#m7 C#m |A B |E
Ⅳ Ⅴ|Ⅲm7 Ⅵm7|Ⅳ Ⅴ|Ⅰ  ※8小節×2

非常に正調なⅣ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵmで、
勢いの有る明るいメロディを明確に表現しています。
解説は当サイト内の恋チュンの記事を参考に。

Aメロ -ロックで駆使するツーファイブ-

続けてAメロ、コード進行はこんな感じ。

E B |D#m7(b5) G#7 C#m|B A G#m7 C#m|F#m7 B  A
Ⅳ Ⅴ|Ⅶm7(b5) Ⅲ7 Ⅵm|Ⅴ Ⅳ Ⅲm7 Ⅵm|Ⅱm7 Ⅴ Ⅳ

E B |D#m7(b5) G#7 C#m|B A G#m7 C#m|F#m7 B
Ⅳ Ⅴ|Ⅶm7(b5) Ⅲ7 Ⅵm|Ⅴ Ⅳ Ⅲm7 Ⅵm|Ⅱm7 Ⅴ

いやはや、ロックバンドのコード進行とは思えません。
ここまでやってくれると解説のしがいが有ります。

ここでのポイントは2小節目のⅦm7(b5)-Ⅲ7-Ⅵm。
これは短調でのⅡm7-Ⅴ7になります。
マイナーに行くⅡm7-Ⅴ7はⅡm7がb5化して、
悲劇感を強烈に出すのですが
明確な明るさの有るブリッジと上手く対比しています。

その後、Ⅴ-Ⅳと順次進行してから
Ⅲm7-Ⅵm-Ⅱm7-Ⅴの連続5度進行で
循環コードを形成しています。

マイナーとメジャーのⅡm7-Ⅴが使い分けられている、
これはロックバンドには本当に稀な事。
5度進行は次のコードに強く進むため、
連続で使い過ぎると説教臭くなったり
予定調和になる傾向が有ります。

自由度が減る意味でロック向きじゃないとも言えますが
コードのタイミングを半拍前にずらす
シンコペーションを活用して見事に進行しています。
ロック曲で連続5度進行を使う時のテクニックとして
シンコペーションは頭に入れておくと良いでしょう。

Bメロ -技法、技法、最後に偽報-

Bメロに入ります、コード進行はこんな感じ。

A B E C#m7|A B E |A G#m7|F#m7 B E E7 |
Ⅳ Ⅴ Ⅰ Ⅵm7|Ⅳ Ⅴ Ⅰ|Ⅳ Ⅲm7|Ⅱm7 Ⅴ Ⅰ Ⅰ7|

A G#m7 C#m7|F#m7 F#7/A# |B |A B C C# |
Ⅳ Ⅲm7 Ⅵm7|Ⅱm7 Ⅱ7/3rd|Ⅴ |Ⅳ Ⅴ bⅥ Ⅵ |

1~2小節目は逆循コード、最後のⅠから5度進行して
3~4小節目はⅣ-Ⅲm7と下降クリシェしてのⅡm7-Ⅴ-Ⅰ、
最後のⅠを今度はセカンダリ・ドミナントのⅠ7に。
5~7小節目は順次進行、連続5度進行ときて
セカンダリドミナントのⅡ7を3度ベースで挟んでⅤに。

…そんなつもりは全くなかったのですが、
当サイトの恋チュン、丸サディのページで
解説した内容の復習の様な進行です。

8小節目は単純なキメの様に聞こえますが、
理論的には”コンスタント・ストラクチャー”と
呼ばれる技法を使っています。
これは”同じコードを同じ音程で平行移動させる”
といった感じのもの。

今回はメジャーコードの半音上昇でしたが、
マイナーの全音移動でもセブンスの1音半移動でも
同じコードの同じ音程で有れば何でも大丈夫です。
この技法の特徴は”調性が失われる”事に有ります。
同じコードが同じ音程というルールに則って動くため、
キーの中心点がぼやかされて聞こえるのです。

今回は次のサビでKey=F#に転調するため、
Ⅴの和音をC#まで上げる為に使われましたが
この技法を使えば半音ずつ上がり続ける事は可能なので
Dまで上がればkey=Gに、Ebまで上がればkey=Abにも転調可能です。

サビ -なんてキーだ!-

さて、サビに突入しますがBメロ最後を経て
key=F#に転調します。
このキーは音列の7個中6個に#が付いたキーです。
E#という独特の音が出るので注意を。
異名同音で音の高さはFと同じですが、E#として扱います。

D.T.C.は以下の様になります。

3声 F# B C# D#m
4声 F#maj7 G#m7 A#m7 Bmaj7 C#7 D#m7 E#m7(b5)

コード進行はこんな感じです。

F# A#7/E# |D#m7 Dm7 C#m7 F#7|B A#m7 Am7 |G#m7 C#|
Ⅰ Ⅲ7/3rd|Ⅵm7 bⅥm7 Ⅴm7 Ⅰ7|Ⅳ Ⅲm7 bⅢm7|Ⅱm7 Ⅴ|

F# A#7/E# |D#m7 Dm7 C#m7 F#7|B C# A#m7 D#m |G#m7 C#|
Ⅰ Ⅲ7/3rd|Ⅵm7 bⅥm7 Ⅴm7 Ⅰ7|Ⅳ Ⅴ Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 Ⅴ|

B C# A#m7 D#m |G#m7 C#|B C# A#m7 D#m |G#m7 C# B
Ⅳ Ⅴ Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 Ⅴ|Ⅳ Ⅴ Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 Ⅴ Ⅳ

取り敢えずキーが複雑なので下の数字表記を参考にするか、
#を消して読んでいくと良いと思います。

さて、このサビの進行でも
セカンダリ・ドミナント、コンスタント・ストラクチャー、
王道進行にツーファイブと技法のオンパレードです。
ただ、おおまかに分けた時に類似する定番進行が有ります。
お気付きでしょうか…?
後半部分は王道進行とツーファイブで判りやすいと思うので、
前半の8小節の部分です。

…鋭い方やベースやピアノで弾いた方は
低音がド→シ→ラと下がっている事に
気付いたのではないでしょうか。
そう、このサビは複雑化されてはいても
恋チュンで解説したカノン進行に則っているのです。

key=FかつD.T.C.でのカノン進行がこちら。

F C/E |Dm F/C |Bb Am7 |Gm7 F
Ⅰ Ⅴ/3rd|Ⅵm Ⅰ/5th|Ⅳ Ⅲm7|Ⅱm7 Ⅴ

この進行でもメロディは見事にフィットします。
ただし、全体のコードはかなり平和なサウンド。
この曲では各技法を駆使して調性を紆余曲折させることで
逆に展開がめまぐるしく変わるスピード感を演出しています。

さて、サビ最後にポツンとB(Ⅳ)のコードが置かれていますが、
このコードも実は大事な役割が。
Bメロまでのキー、key=EのⅤの意図で使われているのです。
蛇足に見えるこのコードによって、2番でキーを戻せている訳です。
更に、実はAメロ4小節目にも同じⅡm7→Ⅴ→Ⅳが出てきていました。
ちゃんと布石が打ってあった訳ですね。

こういった複数のキーで機能を持ち、
転調のきっかけに使われるコードを
”ピボットコード”と呼びます。
一つの転調技法として覚えておくと良いと思います。

作編曲の際、コードチェンジの分量と
ノンダイアトニックの分量をコントロールするのは
必須の作業になります。
様々な技法を覚えて使う事が大事なのではなく、
足し算引き算、取捨選択出来る様になる事が大事です。
そこから広がるコードサウンドの多彩さが
描ける情景の多彩さ、書ける楽曲の多彩さに繋がっていきます。

今回の様な複雑に見える曲でも、
シンプルな部分、複雑化している部分をしっかりと捉えて
シチュエーションによって技法が使い分けられる様に
理論への理解を深めていって貰えればと思います。
目指せ、多作家!ですね。

最後に、ここまで長文を読んでいただいた御礼に
この曲の選曲理由、素晴らしい大仕掛けを紹介します。

サビからAメロにB(Ⅳ)のコードで
キーを一音下に戻した(F#→E)事は既に紹介しましたが、
2番サビ終わり後の間奏でもキーを戻しています。
そしてイントロで使われたブリッジに行って
再びサビに戻るのですが、
この時、サビの出だし「桜が」をkey=Eで一度歌い、
そしてすぐさま、一音上のkey=F#で「桜が」と歌い直します。

これの何が大仕掛けか。
技法自体は半音転調や一音転調で良く使われる
メロを平行上昇させるパターンなんですが、
実は行き着いた先のサビのキー、
”今までのサビのキーと変わっていない”のです。

平行移動の上昇感、高揚感は得られるのに
そこからのサビの歌や演奏には一切関係無い、
目からウロコというよりは大笑いした技法です。
この曲の様にサビで一音上に転調しない曲でも、
2番サビ後の間奏時に一音下のキーに落とせば使用可能です。
素晴らしいテクニックなので是非使ってみて下さい。

当サイトではJ-POPと洋楽の名曲を
コード理論から解析したページを多数掲載しています。
ぜひ他の楽曲の解説もご覧ください。

contact